◯腹腔鏡の避妊・去勢手術

体の負担を少しでも小さくするため、腹腔鏡を使って避妊と去勢手術を行っています。

腹腔鏡手術とは

皮膚に3~10mmほどの小さな傷を作り、トロッカーと言われる筒を入れ、そこからカメラや機器を挿入します。さらに腹腔内には炭酸ガスを入れて膨らませ、モニターに映った映像を見ながら体の中で手術を実施します。開腹手術と比較すると、カメラで捉えた拡大された臓器を間近で鮮明に確認することができ、また傷も小さく、過度に臓器に触れないため術後の回復が早く、動物への負担が少ないです。

メリット

  • 傷が小さい(3~10mmが2~3つ)
  • 痛みが少なく、回復が早い
  • 多くは日帰り
  • カラーなどで傷を保護するケースは少ない
  • 臓器に触れる機会が少ないため胃腸の機能回復が早く癒着が少ない
  • 術野が間近で確認できるので、卵巣の取り残しや出血の有無をよく確認できる

デメリット

  • 画像からの情報になる
  • 手の感覚は掴めず、視野に限界がある
  • 大きな血管の出血には対応できない
  • 炭酸ガスを入れる、体位を変えることにより呼吸や血液循環に影響を与えることがある
  • 特殊な機器を色々用いるため、費用が高額

腹腔鏡手術適応例


  • 避妊手術(卵巣摘出、子宮卵巣摘出)
  • 去勢手術(腹腔内潜在睾丸摘出)
  • 膀胱結石摘出手術
  • 予防的胃固定術
  • 胆嚢摘出術
  • 肝臓、腸管の生検

腹腔鏡の不妊手術

卵巣摘出

  1. 臍付近に5~8mmの皮膚切開し、ラッププロテクターを挿入し、そこに5mmのトロッカーを2本刺入します。
  2. トロッカーからカメラや手術用鉗子を挿入してお腹の中で卵巣を処理します。
    組織の処理には超音波凝固切開装置(超音波メス)を使用します。
  3. ラッププロテクターの部分から卵巣を取り出します。
  4. 最後に内視鏡でお腹全体を確認し、出血がないことを確認してから腹膜、皮膚を縫合して終了です。

子宮卵巣全摘出

  1. 臍付近に3mmのトロッカーを刺入し、最後乳頭付近に5~8mmの皮膚切開してラッププロテクターを挿入し、そこに5mmのトロッカーを2本刺入します。
  2. 3mmのトロッカーから手術用鉗子を、5mmのトロッカーからカメラと超音波メスを挿入してお腹の中で卵巣、脂肪などの組織を処理します。
  3. ラッププロテクターから卵巣と子宮を取り出します。
  4. 最後に内視鏡でお腹全体を確認し、出血がないことを確認してから腹膜、皮膚を縫合して終了です。

腹腔内潜在睾丸摘出

  1. 臍付近に5~8mmの皮膚切開しラッププロテクターを挿入し、そこに5mmのトロッカーを2本刺入します。
  2. トロッカーからカメラと超音波メスを挿入してお腹の中で精巣を確認、処理します。
  3. ラッププロテクターの部分から精巣を取り出します。
  4. 最後に内視鏡でお腹全体を確認し、出血がないことを確認してから腹膜、皮膚を縫合して終了です。